リストカットは“ただの傷”じゃない――医学的に見る隠れたリスク

リストカット(手首や腕を切る行為)は、一見すると「皮膚を少し傷つけているだけ」に見えるかもしれません。
しかし、医学的に見ると、見た目以上に体の中では深刻な反応が起きています。
ここでは、リストカットがもたらす身体的なリスクを、専門的な観点から整理します。


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血栓ができるリスク

傷ついた血管は止血のために、血小板が集まり凝固反応を起こします。
繰り返し同じ場所を切っていると血管の壁が炎症を起こし、血栓性静脈炎を発症することがあります。
血のかたまり(血栓)が流れて肺に移動すると、肺塞栓症と呼ばれる重篤な合併症を引き起こす可能性もあります。


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感染症のリスク

カッターや刃物などで皮膚を切ると、そこから黄色ブドウ球菌などの常在菌が体内に入りやすくなります。
これが蜂窩織炎(ほうかしきえん)や敗血症を引き起こすことがあります。
傷の消毒や清潔管理が不十分だと、皮膚の奥深くに感染が広がり、壊死性筋膜炎という命に関わる感染症に進行するケースもあります。


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神経・腱の損傷

手首や前腕は、細い神経や腱が密集しています。
たった数ミリのズレでも感覚麻痺手指の動作障害が起こることがあります。
また、繰り返し傷をつけると線維化(組織が硬くなる現象)が進み、慢性的な痛みやしびれが残ることもあります。


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「スッとする」理由――脳の反応

リストカットのあとに一時的に「落ち着く」「スッとする」と感じる人が多いのは、
脳が痛みをストレスとして認識し、エンドルフィンやアドレナリンを分泌するためです。
この反応は一種の神経化学的な快感を伴い、やがて依存的な行動パターンに発展することがあります。


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「死にたい」ではなく「痛みを表現したい」

多くの人は「死にたい」から切るのではなく、
「どうしようもない感情を表現する手段がない」「どうしようもない自分を戒めたい」から切ってしまうケースが多いと言われています。
その行動の裏には、助けを求めている心が隠れています。
「どうしてそんなことをするの」と責めるよりも、
「何がそんなに苦しいのか」を丁寧に聞くことが、周囲にできる最初の支援です。


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 まとめ

  • リストカットは血栓・感染・神経損傷などのリスクを伴う行為

  • 繰り返すほど身体的・精神的な依存を強める可能性がある

  • その行為の裏には、苦痛を伝えたいという心理的背景がある

 

免責事項:この記事は医療従事者による診断や治療を目的としたものではありません。リストカットや自傷行為に関して不安を感じている場合は、専門の医療機関や相談窓口にご相談ください。

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