■ 自分を見つめるもう一人の自分、「メタ認知」とは?
「メタ認知」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これは心理学や教育の分野でよく使われる用語ですが、実は私たちの日常生活のあらゆる場面で重要な役割を果たしています。
簡単に言えば、**「自分の思考や感情を、もう一人の自分が客観的に観察する力」**がメタ認知です。
たとえば、イライラしているときに「今、自分はイライラしてるな」「でもこれは寝不足のせいかもしれない」と考えられる人は、メタ認知が働いています。
■ なぜ「メタ認知」が大切なのか?
メタ認知があると、感情に飲み込まれる前に**“ひと呼吸置く”ことができる**ようになります。
これは人間関係や仕事、子育てにおいて非常に大きなメリットになります。
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衝動的な発言や行動を防ぐ
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問題が起きたときに冷静に対処できる
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他人の感情も読み取りやすくなる
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自分を責めすぎたり、相手を一方的に攻めることが減る
いわば、「感情のハンドルを自分で握る」能力なのです。
■ メタ認知が弱い人の特徴
一方で、メタ認知が発達していないとどうなるでしょうか?
次のような傾向が見られることがあります。
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すぐに感情的になる
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自分が怒っていることにすら気づいていない
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他人のせいにしやすい(責任転嫁)
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「なんでいつもこうなるの?」と同じ失敗を繰り返す
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被害者意識が強く、自分を正当化しがち
こうした状態では、自分の過去の痛みと向き合うことも難しくなります。
■ 「毒親」の多くは、メタ認知が働いていない
たとえば、「私はあのとき苦しかった。だからあなたも同じように苦しむべきだ」という親。
これは、自分の過去の苦しみを未処理のまま、子どもに転化している状態です。
本来であれば、
「私は苦しかった。だからこそ、あなたには同じ思いをさせたくない」
と考えるのが、親として成熟したあり方のはずです。
しかし、メタ認知が弱いとこうはなりません。
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自分の過去の感情にとらわれすぎている
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子どもを「過去の自分への復讐の対象」にしてしまう
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正義感や教育の名を借りて支配する
つまり、「毒親」の背景にはメタ認知の欠如が潜んでいることが少なくありません。
■ メタ認知は生まれつきではなく、「育てられる能力」
ここで希望のある話をひとつ。
メタ認知はトレーニングによって育てることができます。
具体的には次のような方法があります。
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日記を書く(自分の感情を文字で客観視)
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「なぜそう思ったのか?」と自分に問いかける習慣をつける
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感情に点数をつけてみる(例:「今の怒りは10段階で7くらい」)
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他人との対話を通じて自分の反応を知る
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カウンセリングや心理支援を利用する
「今の私は何を感じているのか」「なぜそう思ったのか」と立ち止まる習慣は、思っている以上に効果があります。
■ 終わりに:「自分を眺める目」を育てよう
私たちはつい、感情や思い込みに支配されて行動してしまいがちです。
しかし、自分の考えや感情を一歩引いて見つめることができれば、
人間関係のトラブルも、親子の連鎖も、少しずつ違う形に変えていけます。
「自分を責めないために、でも甘やかさないために」
自分を俯瞰できる“もう一人の自分”を育てる。
それこそが、過去に苦しんだ人が、次の世代に優しさを渡していくための第一歩になるのです。
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