はじめに:私はいつでも寝られる。でも、精神疾患がある
「精神的にしんどい人は、眠れなくなるらしいよ」
そう言われたことが何度もあります。
でも、私はどんなにつらくても、どんなに泣いていても、普通に眠れます。睡眠薬を飲んだこともありません。
そして私は今も、精神疾患と共に生きています。
この事実は、よくある「精神疾患=不眠」のイメージを根底から崩してくれるものだと思っています。
結論:眠れるからといって、精神的に健康とは限らない
まず結論から言えば、
「眠れる=健康」ではありません。
「眠れない=精神疾患」でもありません。
精神疾患と睡眠の関係は非常に複雑で、個人差が大きいのです。
世間に広まる「不眠=うつ」のステレオタイプ
精神疾患、特にうつ病や不安障害が語られるとき、
「夜眠れない」「朝起きられない」「中途覚醒がある」など、睡眠の問題がよく取り上げられます。
これは間違っているわけではありません。実際、多くの人に当てはまります。
でも、それがすべてではないのです。
● 眠れるタイプの精神疾患もある
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解離性障害
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発達障害に起因する二次的うつ
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虐待サバイバーのPTSD(過覚醒ではなく、逃避的に寝るタイプ)
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回避性人格障害
こうしたケースでは、「現実から逃げるように眠る」ことがあります。
また、心が慢性的に麻痺している状態では、ストレスを感知せず眠れるということもあります。
「眠ること=逃避行動」だった過去の私
私は、どれだけ理不尽な環境でも、
泣き疲れてでも、電気がついたままでも眠れました。
眠ることは、ある意味で「心が自動で逃げる装置」だったのかもしれません。
眠っている間は、誰からも責められず、
母親に否定されず、社会から存在を測られない。
眠ることが「安心」ではなく、「防衛」だったのです。
精神科で「睡眠はどうですか?」と聞かれる理由
精神科で最初に聞かれることのひとつが、「眠れていますか?」です。
これは、**睡眠がもっとも分かりやすい“心と体のバロメーター”**だからです。
でも、それだけを見て「眠れているなら大丈夫」と言ってしまうのは危険です。
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心が感情を閉ざしている状態(アレキシサイミア)ではストレスに気づかず眠れる
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無気力や思考停止の状態でも「よく眠れてます」と答えてしまうことがある
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子どもの頃から心を凍らせて生きてきた人は、“眠れる”ことが特別でもなんでもない
つまり、「眠れる=元気」は大きな誤解です。
まとめ:「眠れてる=大丈夫」じゃない。見えない心のサインを見落とさないで
この記事で伝えたかったのは、たった一つです。
眠れるからといって、あなたの苦しみが消えるわけではない。
むしろ、眠ることでしか逃げられなかった日々がある人もいる。
精神疾患は、必ずしも「不眠」とセットではありません。
「よく眠れる精神疾患」も、ちゃんと存在しています。
自分の苦しみを、“よく眠れるから大したことない”と過小評価しないでください。
そして、他人の眠りの深さだけを見て「元気そう」と決めつけないでください。
見えない心のサインは、眠りの表面だけでは見えないことがあるのです。
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