「いいから何か言いなさい! 言わないとわからないでしょう!」
――こんな言葉に追い詰められたことはありませんか?
言えない理由は、怠けているからでも、反抗しているからでもありません。
多くの人が見落としがちですが、**「自分というものがない」感覚のなかでは、何をどう言えばいいかがそもそも“わからない”**のです。
自分の現在地がわからない。だから言葉が出てこない
私にとって、何かを「話す」「伝える」ということは、ある程度自分の中に“像”ができている前提が必要です。
けれど、その像が、そもそも存在していない。
「Where am I?(私はどこにいるの?)」という状態。
自己認識のコンパスが壊れているのに、地図の話をされてもどうにもならない。
それが、「自分がない」と感じるときのリアルです。
周りから見れば「黙ってる人」。でも本人は必死
他人から見れば、
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「なんで何も言わないの?」
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「どう思ってるかくらい言ってよ」
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「意思がないの?」
と思われがちです。
けれど本当は、“わからなさすぎて言えない”。
言語化しようにも、頭の中に素材がない。
自分がどこにいて、何を感じているのか、まるで霧の中にいるような感覚なんです。
基本的なことすら、自信を持って言えない自分
「今日は疲れた」
「これはうれしい」
「これはイヤだ」
そういう“当たり前”の言葉すら、どこか他人事のように感じてしまう。
言っても間違っているような気がする。
「違うって言われたらどうしよう」と萎縮して、また黙ってしまう。
これは「自分が嫌い」とか「自己肯定感が低い」という話以前に、
そもそも“自分という輪郭”が薄くて、そこに触れる言葉が出てこないという深い問題です。
伝えるには、「自分を感じること」から始める必要がある
本当は、誰だって心の中に言葉はある。
でも、それをつかむためにはまず、自分が今ここにいるという実感が必要なんです。
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小さな感情に気づくこと
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嫌だったことを「嫌だった」と認めること
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「これが自分の気持ちかも」と仮定してみること
それが、少しずつ“自分の輪郭”を取り戻す第一歩になります。
結び:わからないのは「おかしい」からじゃない
言葉にできないとき、自分を責めないでください。
それは「未熟」でも「怠け」でもありません。
今はまだ、自分を見失っているだけ。
だからこそ、焦らなくて大丈夫です。
他人に言われるままに何かを語らなくてもいい。
「わからない」という感覚の奥に、自分なりの真実があります。
少しずつ、自分の声を聞いてあげましょう。
たとえ最初は曖昧でも、そこからしか“本当の言葉”は生まれてこないのだから。
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